紙・段ボールとデザインで未来をつくる

『新しい価値はデザインにあり』『デザインでよりよい社会を創る』と紙、ダンボール素材で様々なモノ・コトに挑戦する株式会社ペーパーワールド。『デザイン』を社の前面に掲げる岩崎隆社長はクリエーターたちの新しいアイデアを具現化へ導き、発信しています。その発信がきっかけとなり、エグチデザインスタジオも製品デザインやデザイン教育でも協力して頂いています。平成22年(2010)にペーパーワールドに社名を変更した後、更に活動、発信の幅を広げている株式会社ペーパーワールドの岩崎隆社長とのテーブルトークです。

関連リンク:株式会社ペーパーワールドウェブサイト

『いくつもあるダンボール会社の中からなぜか・・・』

江口

出会った頃は社名がペーパーワールドではなくホームページも今と違いましたね。

岩崎

全然違いますね。まだ城東紙器っていう名前やし。

江口

最初はコンペをやっているのを何かで知って。

岩崎

そうそう。ダンボールアイデアコンテストっていうのをやってて。1回目か2回目ちゃうかな。

江口

それで多分ホームページを見たと思うんですよね。

岩崎

ホームページも、当時はみんなが持ってるっていう感じでもなかったでしょうしね。

江口

以前、ダンボールのデザインをやったことがあったので探してたんです。

岩崎

そうそう。なんかアイデアを持ってはったんや。

江口

それこそ日本全国に沢山段ボール会社あるんですけども、なぜか、なぜかといったら変なんですけど(笑)。

岩崎

いや、なぜか。

江口

コンペをやっているというのも珍しかったのかもしれないですけどね。それで連絡をした。

岩崎

最初は江口さんから、こんなん少し考えてんねんけどって言われて。

江口

そうですね。展示台のアイデアを持って行ったのが最初だったんですね。

岩崎

それすごく面白そうやなって僕も思ったんです。あのころちょうど当社オリジナルの展示台を作ったころやったんです。それもデザイナーさん持ち込みの案件なんですよ。

江口

そうですか。

岩崎

持ち込みの案件で、それは案外面白く商品化されて。ちょうどそれと同じようなタイミングでまた違うタイプのものを見せてもらって、面白いなと思ってコンタクト取ったっていう記憶がありますね。

江口

その当時は今ほど「デザイン」ということを前面出されていなかったと思います・・・これ、物のデザインだけの意味ではないですがで・・・。今はホームページに新しい価値は「デザイン」っていうふうに最初に出していますね。

岩崎

それはうちの社名変えてからですからね。

江口

これは社名変更してからということなんだけれども、最初にお会いしたときから、今までお会いしたことのあるダンボール会社の方とはちょっと違う印象がありました。その後社名と共にホームページが変わって、やっぱり面白いなと思ったんです。ホームページの最初に『デザイン』って、ここまで全面的に宣言しているダンボール会社も珍しいところじゃないかなと思うんですけども。そのあたりのことをお聞きしたいと思ったんです。

岩崎

ほんま本気でそう思っているから!です。今江口さんがおっしゃったみたいに、世の中にはいっぱいダンボール屋さんがあって、ダンボール会社としてきっちり売上を上げ、収益を上げておられる会社はいっぱいあるわけです。つまりユーザーさんに対して普通のダンボールの箱を供給するっていう本来のビジネスモデルで仕事ができるところっていうのが当たり前なんですよね。残念ながら当社の場合は、いろんな事情があって、大手の家電メーカーの一次下請けで、家電製品の梱包材を供給するっていうのがうちの仕事の中心だったんですよ。コスト、コスト、コストなんですよね、とにかく。とりあえず値段が安けりゃええんや。そのためのいろんな努力をしなさいと。だからコストダウンするためにちょっとでも紙の使用量を減らすとか、箱の寸法を変えるとか、形状を変えるとか。それでも一つのデザインではあんねんけど。

江口

確かにそれもデザイン。

岩崎

一つのデザインではあんねんけど、ほんまにそのうちタダなってしまうみたいな。コストダウンに関しては相当厳しい話になる。それにちゃんとついていければいいんだけれども、なかなかついていきにくいところがある。面白くないというとよくないかもしれないけど、ちょっと僕の思ってるところとは違うなと。

江口

なるほど。

岩崎

だからそれはそれでベースに仕事としては置いておるけども、それ以上にプラスアルファで付加価値をどうしても付けたいなというのがすごくあって。それにはやっぱり自社でデザインしたもんを売るとか、自社で価格を決めたものを売るとか、そういうふうに是非していきたいなと。

江口

オリジナルですね。

岩崎

それじゃないときっと付加価値っていうのはつかない。いわゆるユーザーさんから言われてなんかを考えているだけだと、言われたことをやるわけやから、それ以上にその価値を認めてもらいにくいっていうところがあるわけですよね。お客さんが課題を与えてんねんから、お前それの解決策を持ってきただけやねんから、それはこれいくらいくらで買うよという話になるじゃないですか。自分たちで「こんなん作ったけどどうでしょう。ちなみにこんな価格なんです」というところまでデザインしないとプラスアルファにならないかと、そう思ったんですよ。

江口

ちなみに、デザインと同じ話なんでしょうけども、例えばこういう製品ができたから新しい箱をいくらでやってくれと言われたときに、やはりコストのことが主なんでしょうけども、それによって新しい梱包の方法、技術っていうが生まれるっていうのはあるんですか?

岩崎

それはあると思いますよ。どんどん包装、梱包も変わっていますからね。だからわれわれが主導的にお客様にご提案できてなかったということもあるやろし、あるいはご提案しても、アイデアだけ取られて価格の安いところに発注されるみたいなことも中にはあるし。それはいろいろなケースがありますね。

江口

今回のイスやテーブルの脚部の底を箱状にしたじゃないですか。やっぱりああいうところの箱の作り方なんていうのは、ダンボール設計士、専門家でないとなかなかできないなと思うんですよね。

岩崎

そんなこともないんじゃないですか?

江口

ああいうふうにはなかなか考えにくいですよ。やっぱりそういう要望があって、条件があって新しい箱、設計の仕方っていうのが出るんだろうなと思うんですけどね。

岩崎

それはあるでしょうね。今ちょうど東京パックって展示会やっているんですけど、やっぱり大手さんは開発費をかけた新しい素材とか機械も含めた面白いものをどんどんどんどん作り展示されます。だからわれわれは、まだない切り口で面白いもの、新しいもの、大手では考えられないものを創造していかないといけない。

江口

そういう何かを入れるために開発された仕組みだから、次に使うときにまたその仕組みを使ってオリジナルを作れれば一番いいわけですよね。何か入れるために新しい設計、デザインの箱を作って、でもそれで終わりになっちゃうわけですよね。通常、家電だったら家電を入れたら終わり。で、新しい何か箱の方法とか、何かできるじゃないですか。逆にそれを使って中に入れるものがありきのものじゃないオリジナルの何かができれば面白いんじゃないかと思いますが。

岩崎

箱の場合は、何を入れるのか、どう包装するのかというデザインだから、やっぱりちょっと発想は違うんじゃないかなと思いますけどね。

江口

発想は違いますかね。

岩崎

やっぱり機能面を絶対に追求せんとあかんから。例えば潰しやすい箱とかっていうのを求められるときに、じゃあどうしたらお客さんが納得、処分するときに潰しやすくできるかっていうのは考えますよね。ところがその考えた形状が、例えばこっち側で何かにコンパクトにたためる何か新しい商品にそれが結びつく。

江口

ほかの何か。

岩崎

それはあるかもしれへんけど。

江口

それはありますよね。逆にそれがどんどんできると一番いいわけですよね。

岩崎

そうでしょうね。

江口

だからその箱の仕組みがオリジナル、でもいちいちなかなかそれで特許特許ってわけにも。

岩崎

いや、でも大手さんは、ほんまちょっとした形を考えるだけで全部特許、意匠なんか登録されますよ。例えばわれわれが構造設計して提案したものを自分とこの名前でどんどんどんどん出願してますからね。

江口

こちらで考えたものを出されちゃうんですね。

岩崎

だから世界一特許申請が多いとか言うてたって、このレベルでか思うときがあるね(笑)。

『デザイナーとのコラボレーションについて』

江口

デザイナー、クリエイターとどんどんやってくっていうことに関しては、一番最初はどんな考え方、始まり方だったんですか?

岩崎

最初から、そう思ってたっていうか。何がきっかけやったんかな。

江口

ちなみに先代の社長さんは?

岩崎

そういうのは全然ないです。他と同じことはするなとは言われた気はしますけどね。僕はやっぱり言葉でいうと、「創造」っていうのと、「デザイン」っていう言葉が、なぜか好きだったんですよね。

江口

それはいつごろの話ですか?

岩崎

いつごろって、別にそんなに意識してないけど、案外ずっとそんなところはある。
自分で構造設計を考えたりとかやってたし。やっぱりデザイナーさんとかクリエイターさんっていうのは、話して面白いっていうか。やっぱり何かを気付かされますよね。何か新しいものを考えたりだとかできるような人と、全くそうじゃないタイプの人が居るじゃないですか。僕は創造できる人と話するのが面白いと思いますね。

江口

年代ではあんまり関係ないかもしれないね。

岩崎

いや、まったく関係ないですね。年いってる人でもすごく面白い人居ますね。うちの会社のオリジナルの商品を作っていこうっていうきっかけになったのも、たまたま見かけた、ダンボールアーティストと呼ばれる面白い先生のダンボール作品を見てなんですが、すぐ電話して。ほんなら「いいですよ」と、ご自宅がアトリエやからいうので行って。で、先生のこの作品をうちで商品化したいねんけど、「ぜひやりましょう」とトントン拍子で話が進んだんですよ。この先生は私と同年代です。
それから後も、デザイナーさん、クリエイターからお声掛けていただくこともあれば、こちらからホームページとか見て、これおもろいことやっとんなと思って声掛けて、そこで一緒にまた面白い商品作ったりとか、そういうのを、まだまだスピードが足らないんですけど、もっともっとやっていきたい。でも当社の場合は、単発になってしまっているので、もうちょっと一本筋の通ったブランドを作れるようなかたちにまで、社名というよりもブランドで何か面白くできひんかなと考えてます。例えば家具シリーズでこういう家具を作るとか、文具のシリーズでこんなんするとか。デザイナー、クリエイターの人と一緒に。ちょっと早くやりたいなというのはすごい思ってます。

江口

確かに今は、面白いものがバラバラとあるという感じですよね。統一すればいいということではないでしょうが。

岩崎

やっぱり、これってペーパーワールドの商品やろなみたいに思ってもらえるようなラインとか、このブランド、わが社が創るブランドが、世界で通用するブランドに育てる。そんなふうにしていきたいなというのはすごくあります。
今のまんまではちょっと問題で、1個の作品、商品を1個出すことだけで終わってしまってて、そこにもうちょっとクリエイティブな何かが欲しいなというか。なんかちょっと足らんなと自分では思ってるんですけどね。だからそのへんを逆に助けてほしいんですよ。

江口

足りないところっていうのは、『ペーパーワールドらしさ』みたいな感じですかね。

岩崎

そうそうそう。単発で、1個1個はおもろいもん作ったな。で、それで終わり、みたいな感じになってるのでね。そこらへんはほんとにもうちょっとデザイナーさんとかクリエイターさんと一緒になってやっていけたらいいかなと思うところはあるんですけどね。

デザイナーさんだけでいったら何人ぐらいお付き合いがあるものなんですか?

岩崎

そうですね。そんなにたくさんいるわけではないですが、20名くらいでしょうか。例えばパッケージのグラフィックだけやってる方とかもおられるし、建築関係の人とか。どこかの会社に属しているデザイナーさんもいますね。あるいは大阪でも、東京でもきっとあると思うんですけど、行政がデザイナーの集まれるようなスペースを作っていて、そこによく僕も呼ばれたりするので。そういうところでいろんなクリエイターの人と知り合いになったりとかしますね。
あと、最初におっしゃった当社のアイデアコンテスト。今はペーパーワールドアワードと言う名前に代わっていて、応募してくるクリエイター、デザイナーさんっていうのも案外面白い人多いですよね。グッドデザイン賞受賞3回も選ばれているような人が、うちのペーパーワールドアワード受賞も書いてくれてるんです。(笑)。
うちのアワードはグッドデザイン賞に並んでるみたいな感じでね!?

江口

じゃあ、こういうふうになるのは割と、じゃあ最初からイメージがあったんですね。

岩崎

ありました、ありました。それはめちゃめちゃありました。

関西のデザイナーさんと、関東のデザイナーと、気質が違うとかってあるんですか?

岩崎

関東は僕もあんまり、江口さん以外、あと何人か、あんまりその差は分かんないですけどね。
やっぱり、関西より関東のほうがきっともっとおもろいんかなと思うんですけど。

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『素材』

江口

関東の学校、美術やデザイン、建築系の学校課題ではどこも、必ず一課題ぐらい入ってるといってもいいくらいではないかな。それくらいダンボール素材というのは課題で扱いやすいということもあるけど、様々なイメージを触発される素材なんだと思う。

岩崎

面白いもの送ってきはんのは、やっぱり関東のほうが多い。だからペーパーワールドアワード受賞してる人ってたいてい関東の人なんですよ。だから僕、賞金持ってくるのにたいてい絶対こっちに来なあかんっていう感じで(笑)。

その中で江口さんはどんなデザイナーですか。ほかのデザイナーさんと比べてっていうのは、本人の目の前では言いづらいかもしれないですけど。

岩崎

椅子が多いんですよね。

江口

家具デザインが中心ですね。

岩崎

そうなんです。だから椅子のこんな展示会をどっかでやりましたとかっていうようなご案内はいただくんだけれども、あんまり僕そっちはちょっと、ピンときてないんですよ。やはり一番最初の六角形と八角形のやつが面白いかなと。最終形状は面白いなと思ってたんですけど、失礼ですけどそこに至るまでの平面図から立体になるところっていうところがちょっとつながってないので。

江口

まだね。

岩崎

そこは、それはもちろんわれわれがやらなきゃいけないところなんですけどね。

江口

頭にはあるんですけどね(笑)。

岩崎

そうや(笑)。

江口

椅子を最初にやったのは、まだまだ生活の中で使われる、或いは災害避難時などで使われる、定番と言われるようなダンボール素材の家具が世の中に少ないので。まだイスとテーブルだけですが、もっとアイテムを増やし、使い方の提案、発信をしていけば、使われるシーンがあると思っています。まだ他から同じような製品はないですよね。

岩崎

出てないですね。

江口

六角形の展示台も進めて、まだまだやりたいことが沢山あるので、懲りずに今後ともよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。

対談者プロフィール紹介
岩﨑 隆
1957年大阪市生まれ 同志社大学卒業、株式会社リクルート入社東京での勤務を経て株式会社ペーパーワールド、株式会社ダンボール・ワン入社 現在両社代表取締役